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2008.11.24

曹操軍、烏林に終結す

 二日続きで少々気の重い用事があって、気力・体力的に持つかな……と心配だったのだけど、今朝起きたら何とかなりそうな様子。
 これも前日の晩、ワイン&鍋に誘ってくれた友人たちのおかげ。
 というわけで久しぶりに映画館へと足を運び『レッドクリフ Part I』を見てきた。

 三国志に関しては二十年以上前に吉川英治を読んで以来、ずっと楽しんできたものだし、映像化に関してはあまり過剰な期待をしない方向で……と思って見に行ったのだが。
 いや、予想よりかなり面白かった。

 赤壁の戦いを二部作で描くこの作品、Part Iのストーリーは長阪の戦い~赤壁の前哨戦まで。
 序盤から迫力あるアクションシーンで「趙雲かっこえー」と心の中で盛り上がりっぱなし。
 京劇風の荒唐無稽さと野暮なリアルさの間で、かなり絶妙のさじ加減を実現していたのは、さすがアクションでならした監督だけのことはある。
 キャスティングも思いの外違和感なく、それでいて主要人物は書き割りになっていない所もいい。

 でも、中村獅童が演じた甘興、「海賊上がり」って所から見ても甘寧(字は興覇)だよなあ。あえて字(あざな)準拠?の役名にしたのは、何か意味があるんだろうか。
 甘寧もローカルながら関羽同様神様として祀られてるから、その辺に配慮したのかも。

 スペクタクルシーンについても「荒唐無稽」と「リアリティ」の狭間を上手くついている感じで、

  数万の軍勢が号令一下、整然と陣形を組みなおして前進する

 とか、

  おそらくは初めて「それらしく」映像化された九官八卦の陣

 とかのシーンが(フィクションとして)納得行くレベルで見られるので、かなり満足。

 あと、これから見る人に一応の警告。この映画、白兵戦というものがいかに残酷で血なまぐさいものか、という点について、かなり容赦なく描いている。
 流血シーンとかが苦手な人はご注意を。


 それにしても、この映画を楽しめたってのは、自分も「演義の呪縛」からずいぶんと解放されてきたものだ。
 自分は「演義」を元にした吉川英治から入ったせいもあり、どうしても「演義」のエピソードの印象が強くて、そのイメージが固まっちゃってる場合が多かった。
 で、映像化されて武器や鎧のデザイン、ストーリー展開なんかが「演義」と違ってると、それだけで妙な引っかかりを覚えてしまっていた。
(たとえば『レッドクリフ』で出てくるような魚鱗札の兜の方が歴史的にリアルだとわかっていても、「演義」の連環画に出てくるような甲冑を期待しちゃったり、とかね。)
「演義」が正史と違って創作だ、とわかっていたにもかかわらず、「演義」だけを他の創作とは別格に考えすぎていた訳だ。
 それがいつの頃からか

 「演義」も正史を元にした創作なんだし、無理にこだわらなくてもいいじゃないか

 と思えるようになってきて、格段に三国志ものの創作を楽しめる幅が広がったと思う。
 ……その最大の弊害恩恵が、『真・三国無双』シリーズだったりはするのだが(笑)。

 あと、『指輪物語』の映画化にあたって、「映画化するって事はいかに原作のエピソードを切りつめつつ、単なるダイジェストにならないようにするかだ」ってことをピーター・ジャクソンに教えてもらった、ってのも大きいかもしれない。
 冒頭、曹操の出陣にあたって、正史でも演義でも直接関係のない孔融処刑シーンを持ってくることで作中でのキャラクターを際だたせるあたり、うまい「切りつめ方」だと思った。

 とにかく、来年四月の後編は見に行かねばなるまい、と思える作品だった。

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