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2008.01.18

倭から唐へと来た男

 単行本にまとまったのは2004年。
 新書判が出たのは昨年の夏。
 正月休みに買ってきて、全四巻を10日ほどで読み終えてしまった。
 あとがきによれば、書き上げるのに実に足かけ18年もかかったとのこと。それを作品をこんな短時間で読んじゃったのは、ある意味、すごく贅沢な読み方かもしれない。

 夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』

 いや、実によかった。
 正直、最初は『陰陽師』のコピーになるのではないかと心配しながら読み始めたのだが、最初から完成されている安倍晴明に対し、これから「密を盗」んでやろうという空海の、強力だがまだ未完成な部分がちゃんと見えて、空海独自のキャラがたっているのがいい。
(橘逸勢も元々の屈折した部分を見せてくれているのだが、身の程を知って「よい男」になってしまった後なので、立場上、博雅と少々かぶってしまうのは仕方のない所か……。)

 それにしても夢枕獏という人は、感動している人を描くのが実に上手い。
 慨嘆するシーンも上手い。
 作中、ある人物が


「およそ、この世に不様でない人間などいるであろうか。」

と血を吐くような叫びを上げるシーンなどものすごくいい。

 いかにも獏さんらしく、あとがきで「ど傑作を書いた」と自画自賛している。
 それでも反発を感じないのは、


 俺の読みたいのはこんな物語だ

 って想いがストレートに伝わってくるからなんだろう。

 夢枕獏の文章の魅力ってのは、凝った本文を続けておきながら、ここぞという所で、すごく素朴な言葉を、絶妙のタイミングで投げつけてくる所にあるのだよな。

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