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2008.01.08

「怪獣予報」は無理そうだけど

 MATもTACも、ウルトラ警備隊も無い。
 何でも解説して超兵器を発明してしまう「博士」もいない。
 にもかかわらず、生物学や物理学の法則を無視した「怪獣」だけが実在する世界。
 そんな怪獣への対策を担当しているのは、気象庁の一部署である。
 何で気象庁かって?
 怪獣災害は地震や台風と同じ自然災害なのだから、例え現場には自衛隊が災害出動したとしても、担当省庁は気象庁になるのだ。

 これが山本弘『MM9』の基本設定。
 主役チームを自衛隊にしなかったのがこの作品の上手いところ。おかげで、ストーリーが単なる戦闘アクションに終始せずに済んでいるのだ。

 怪獣が存在する理由とされている「多重人間原理」はある意味夢オチなみの力業とも取れなくは無いが、それもちゃんと物語のオチに直結しているあたりがいい感じ。
 折り込まれてた新刊案内みたいに「ハードSF」と呼ぶには無理があるが、少なくともジャンルSFとしては立派に成立していると思う。

「怪獣特撮はSFじゃない」
 って台詞は、ある一定以上の年齢のSFファンなら一度は聞いたことのあるフレーズだが、言ってみればこの作品は
「怪獣特撮をいかにSFにするか」
に挑戦した作品ともいえるだろう。

 内容は全5話構成の連作短編になっているが、各話がちゃんと後の話の伏線を含んでいるため、全体としてのまとまりも悪くない。
 最終話の怪獣の名前はちょっとラノベ風味効きすぎな気もするが、ある意味それも含めて絶妙な平行世界モノとして(あるいは、パロディ小説として)も読むことができる。

 まあ、なんだかんだ行っても個人的には第1話で、怪獣の正体がわかったときに本部のなかで正体をさす言葉が飛び交うシーンに、妙なリアリティーを感じてしまったのが評価のきっかけだったりする(笑)。
 こういうネタは、細部が大事なんだよ。

 なお、カバーイラストにはまるでハリウッドゴジラの場面のような破壊されたビルが出てくるが、基本的にこの小説はカバーのような事態を避けるために全力を尽くす物語なので、その点はご注意を。

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