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2006.12.30

今年読んだ本をいくつか その2

前の記事はノンフィクション(?)や研究書が多かったので、今回は小説作品を中心に上げてみる。

『南海の金鈴』
『白夫人の幻』
『北雪の釘』 ロバート・ファン・ヒューリック
 今年はディー判事の翻訳が3冊出た。
 作中の時系列では一番最後にあたる『南海の金鈴』、初期シリーズ5作品の最後である『北雪の釘』(従来の訳では『中国鉄釘殺人事件』のタイトルだった)と、シリーズ終盤の2作品が含まれていたのが今年の特徴か。
 待望久しい初期シリーズの新訳がハヤカワ・ミステリで出始めてくれたのはありがたいが、シリーズ終盤の作品と言うことで、舞台を去る主要キャラクターもいるのが寂しい。
 ……これ以上は書くとネタバレになっちゃうなあ。

 『白夫人の幻』も、川で行われるボートレースがらみの殺人に、たたりを噂される女神廟の伝説がからむ、いかにも「ディー判事」らしい作品でよかった。

 これでまだハヤカワ・ミステリに収録されていないのは『黄金』『湖水』『梵鐘』『迷路』の初期シリーズ4つと、中公文庫で出ていた『四季屏風殺人事件』、『Phantom of the Temple』、短編集『Monkey and Tiger』の7冊……って、結構残ってるな。


『都市と星』
 以前、古書店でまとめ買いしたうちの一冊。
 今となっては古典に近い作品だけど、久々に正統派の遠未来ものSFを読んだ気がして心地よかった。
 なぜ人々は都市にひきこもったのか、外の世界はどうなっているのか……という興味で引っぱる序盤から、外の世界の実情が語られる中盤、そして本当の歴史と未来への展望をつなげる終盤。
 「破滅後の世界」ネタであっても、こういうさわやかな作品は出来るのだよ。


『黎明に叛くもの』宇月原晴明
 宇月原晴明を初めて読んだのは、友人に借りて『聚楽 -太閤の錬金窟』を(当時は単行本で)読んだ時。
 貸してくれた友人が「誰に薦めるか迷った」と言っていたが、なるほど安土桃山時代の日本史と、錬金術やグノーシス異端といった西洋オカルトを見事に融合した作風に強烈な印象を受けたのを、まざまざと覚えている。
 『黎明に叛くもの』も『聚楽』ほどではないものの、贅沢に詰め込まれたネタの数々と用の東西を融合する作風は健在。
 松永弾正と斉藤道三が義兄弟、しかも(以下、ネタバレ略……ってすぐわかるけど)という設定だけでも、作者の目のつけ所の良さが光る。
 単にストーリーを追うだけでも充分面白いが、ネタにされている歴史上のエピソードなどを知っていれば知っているほど面白さが2倍、4倍と自乗倍で増えていくというのは、まさに「伝奇小説かくあるべし」といえるだろう。

 新書判4分冊で出た時に併載された短編を集めた『天王船』も文庫で出ている。
 こちらでは、最終話にておそらく小説史上最もかっこよく描かれたある歴史上の人物を見ることができる。
 それとは別だが、個人的には秀吉が涙を流すシーン(読んだ人にはわかるよね)が絶品だった。


『龍を駆る種族』
 一見、ファンタジー風に装ってはいるが、実はバリバリの遠未来SF。
 戦いに破れ、宇宙飛行の能力を失って孤立した人類。
 同じ太陽系の惑星から襲撃してくるらしい、蜥蜴のような異星人「ベイシック」。
 この「ベイシック」が「BASIC =原種」の意味、とわかってくるあたりで、この作品のもう一つの主題が見えてくる仕掛けになっている。

 ……それにしても、古本で買って読んだ直後に新装版が出る、ってのは比較的悲しいものがあるな。

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