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2006.12.31

来年もよろしく Ver.2006

 今年は「冊数を押さえて読み応えのある本にも手を出そう」というもくろみもあって、読んだ本は89冊。
 もくろみ通りに行ったかはともかく、丁度いい感じのペースだったように思う。

 澁澤龍彦『うつろ舟』の再読に始まり、古本のエドモンド・ハミルトン『脅威!不死密売団』で終った一年だった。

 吸い込まれて行くような心地よさの『うつろ舟』、いかにも古臭い設定の古典的スペースオペラなのに、なんでこんなに面白いんだろうキャプテン・フューチャー

 うーん、新刊も古めの作品の新訳や、歴史物ばっかり読んでたような気がするな。
 そんな中、新しめの作品を薦めてくれた友人たちに感謝。
(ここには感想書けなかったけど、薦めてもらったのはどれも面白かったです。)

 年が明けてもマイペースなのは、崩したくても崩せそうにないので(笑)あいかわらずで行くと思います。
 では、来年もよろしく。

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2006.12.30

今年読んだ本をいくつか その2

前の記事はノンフィクション(?)や研究書が多かったので、今回は小説作品を中心に上げてみる。

『南海の金鈴』
『白夫人の幻』
『北雪の釘』 ロバート・ファン・ヒューリック
 今年はディー判事の翻訳が3冊出た。
 作中の時系列では一番最後にあたる『南海の金鈴』、初期シリーズ5作品の最後である『北雪の釘』(従来の訳では『中国鉄釘殺人事件』のタイトルだった)と、シリーズ終盤の2作品が含まれていたのが今年の特徴か。
 待望久しい初期シリーズの新訳がハヤカワ・ミステリで出始めてくれたのはありがたいが、シリーズ終盤の作品と言うことで、舞台を去る主要キャラクターもいるのが寂しい。
 ……これ以上は書くとネタバレになっちゃうなあ。

 『白夫人の幻』も、川で行われるボートレースがらみの殺人に、たたりを噂される女神廟の伝説がからむ、いかにも「ディー判事」らしい作品でよかった。

 これでまだハヤカワ・ミステリに収録されていないのは『黄金』『湖水』『梵鐘』『迷路』の初期シリーズ4つと、中公文庫で出ていた『四季屏風殺人事件』、『Phantom of the Temple』、短編集『Monkey and Tiger』の7冊……って、結構残ってるな。


『都市と星』
 以前、古書店でまとめ買いしたうちの一冊。
 今となっては古典に近い作品だけど、久々に正統派の遠未来ものSFを読んだ気がして心地よかった。
 なぜ人々は都市にひきこもったのか、外の世界はどうなっているのか……という興味で引っぱる序盤から、外の世界の実情が語られる中盤、そして本当の歴史と未来への展望をつなげる終盤。
 「破滅後の世界」ネタであっても、こういうさわやかな作品は出来るのだよ。


『黎明に叛くもの』宇月原晴明
 宇月原晴明を初めて読んだのは、友人に借りて『聚楽 -太閤の錬金窟』を(当時は単行本で)読んだ時。
 貸してくれた友人が「誰に薦めるか迷った」と言っていたが、なるほど安土桃山時代の日本史と、錬金術やグノーシス異端といった西洋オカルトを見事に融合した作風に強烈な印象を受けたのを、まざまざと覚えている。
 『黎明に叛くもの』も『聚楽』ほどではないものの、贅沢に詰め込まれたネタの数々と用の東西を融合する作風は健在。
 松永弾正と斉藤道三が義兄弟、しかも(以下、ネタバレ略……ってすぐわかるけど)という設定だけでも、作者の目のつけ所の良さが光る。
 単にストーリーを追うだけでも充分面白いが、ネタにされている歴史上のエピソードなどを知っていれば知っているほど面白さが2倍、4倍と自乗倍で増えていくというのは、まさに「伝奇小説かくあるべし」といえるだろう。

 新書判4分冊で出た時に併載された短編を集めた『天王船』も文庫で出ている。
 こちらでは、最終話にておそらく小説史上最もかっこよく描かれたある歴史上の人物を見ることができる。
 それとは別だが、個人的には秀吉が涙を流すシーン(読んだ人にはわかるよね)が絶品だった。


『龍を駆る種族』
 一見、ファンタジー風に装ってはいるが、実はバリバリの遠未来SF。
 戦いに破れ、宇宙飛行の能力を失って孤立した人類。
 同じ太陽系の惑星から襲撃してくるらしい、蜥蜴のような異星人「ベイシック」。
 この「ベイシック」が「BASIC =原種」の意味、とわかってくるあたりで、この作品のもう一つの主題が見えてくる仕掛けになっている。

 ……それにしても、古本で買って読んだ直後に新装版が出る、ってのは比較的悲しいものがあるな。

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2006.12.26

今年読んだ本をいくつか

 トップが訃報記事のまま新年を迎えるのも少々暗いので、今年読んだ本の中から、まだ感想をここに書いていなかったものをいくつか上げてみる。
 中には余所で感想書いたものもあるけど、二度読みした方はご容赦を。


『本当にいる世界の「未知生物(UMA)」案内』天野ミチヒロ
 コンビニ漫画のような装丁に毒々しいキッチュな表紙、完全にキワモノ……と見せかけておいて、実は非常によくできた本。
 ページをめくると、子供のころにわくわくしながら読んだ世界の「怪獣」(昔の小学生はUMAなんて言葉、使わなかったんだよ)が目白押し。
 それだけなら他にもありそうなものだが、この本の良い所は「正体の判明したものについては明記する、明らかに信憑性の薄い話はツッコミを入れる」というスタンスがちゃんとしていること。
 こういう本が欲しかったんだよ、元・怪獣少年のおじさんは。
 個人的には「カナス湖の巨大魚」の項で、故・開高健がモンゴルまで巨大魚を釣りに行った話もちゃんと紹介されていて、当時その様子をTVで見ていた身としては非常に懐かしかった。
 この内容で税込み580円。
 もしかしたら今年のベストブックかもしれない(笑)。


『東方学報第七十三冊』
 中島長文氏による「『任昉述異記』校本」ならびに「『任昉述異記』考」が収録されているので、以前から欲しいと思っていたのだが、2001年3月の号なので「無理かな?」と思っていたのだが、神保町は山本書店にて発見。
 中国神話関係者には蚩尤伝説の基本文献扱いされている任昉述異記だが、「『任昉述異記』考」では梁代の著者に仮託されたこの本が、実際には中唐~北宋の間にいろんな書物からの記述を集めて作られた、ということを文献学的に論じていて非常に面白かった(^^;)。
 ……でも、自分にとって肝心(?)の「亀足・蛇首」の蚩尤については出所不明のようだ。残念。


『神々と獣たち ナチ・オカルティズムの謎』ダスティ・スクラー
 神保町での掘り出し物。今は亡き大陸書房より、昭和63年五月12日初版(約20年前の本なので、さすがにAmazonに情報がなく、目次の載っていた紀伊国屋書店のサイトへリンクしてある)。
 1920~40年代ヨーロッパを舞台にした伝奇モノでは定番のナチスとオカルト思想の関連について、19世紀末~1930年代の社会情勢とあわせて解説した本。
 決してあやしげな内容ではなく、むしろ「いかにして当時のドイツ人たちが、超科学とオカルトにだまされて行ったか」という、オウム真理教事件にも直結する問題を扱っている(出版はオウム事件より前なので、カルト教団の例としては統一教会が上げられていた)。
「真の神が創ったのは霊界だけで、この世を創ったのは『邪悪な造物主(デミウルゴス)』である」というグノーシス主義の思想が、
 新約聖書の神=真の神
 旧約聖書の神(=ユダヤ教の神)=邪悪な造物主
という図式によりユダヤ人迫害の思想的根拠になっていた、というのは指摘されて初めて気がついた。
 この本については、いつか改めて感想をまとめるつもり。


『真ク・リトル・リトル神話体系』9巻
 これも古書店で入手。これでしか読めない作品がいっぱい収録されているので前から欲しかった一冊。
 リン・カーターの作品は『墳墓の主』『シャッガイ』の2作が収録されているが……リン・カーターって、本当に見事なファンフィクション書きだなあ(^^;)。


……他にも面白かった本はいろいろあるけど、長くなって来たので取りあえずここまで。

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