« 夏らしい話(?) | トップページ | 帝都のディー判事 »

2005.09.10

時の力の恐ろしさ

 ダンセイニ卿の描く神々は、傲慢で、しばしばいい加減で、かつ残酷でありながら、妙に悲しい気配がする。
 それは神ですら真理については「我は知らず」と囁くのみで、不実な僕である〈時〉のために、全ての崇拝者を失って死んで(あるいは永の眠りについて)いくためだろうか。

 河出文庫のロード・ダンセイニ短編集第3弾、『時と神々の物語』を読了。
 内容は著者の短編集としては最初に出た2冊『ペガーナの神々』『時と神々』に加えて、『三半球物語』と著者の生前には短編集に入らなかった諸作品を収録している。
 ううむ、どうも分厚いと思ったら、今までの河出文庫の短編集の二倍(既刊が短編集2冊分なのに対し、今度は実質4冊分)もボリュームがあったのか。
 基本的に全訳が前提のこのシリーズ、ハヤカワ文庫FT版『ペガーナの神々』では部分訳だった『時と神々』の方も全訳されている。
 また『夢見る人の物語』にも収録されていた『ヤン川を下る長閑な日々』も、『三半球物語』の原著に従い、続編と合わせて再度収録されている。
 『三半球物語』や生前に単行本未収録だった分と『ペガーナの神々』『時と神々』の間にはやはり雰囲気の差が感じられるが、一応は神々や霊的なものについての作品が集められているため、読んでてつらくなるほどではない。

後半に収められた短編(特に『ヤン川を~』の続編2作)を見ていると、やはりロード・ダンセイニも「空想は、歳月を経るにつれ弱っており、夢の国を訪れることは、ますます希に」なっていたのだろうと思う。
 それでもふとした日常の隙間から、遙か昔に眠りについた神々の気配を感じては作品にしていたのではないだろうか。

 ちょっと毛色の変わったところでは『電離層の幽霊』。著者晩年の1955年(ダンセイニ卿の没年は1957年)に書かれたこの作品、時代のせいか、微妙にSFがかった道具立てで「ダンセイニもこんな作品書いていたのか」とちょっと面白かった。
 ……そういえば『魔法の國の旅人』収録の『われらが遠いいとこたち』も、レシプロ飛行機で火星まで行ってくる話だったっけ。

 厚みも文字数もかなりボリュームのあるので、ダンセイニの世界にどっぷり浸かりたい人に、特にお薦めしておく。

|

« 夏らしい話(?) | トップページ | 帝都のディー判事 »

コメント

電離層の幽霊、あれは大笑いした。
ダンセイニの軽妙な作品って、知られてないよねえ。
すごく面白いのに……。
今回、河出文庫って短編集全部出すつもり、なのだろうか?

投稿: はぐれ狼 | 2005.11.02 10:41

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18659/5876114

この記事へのトラックバック一覧です: 時の力の恐ろしさ:

» 『ペガーナの神々』そして『時と神々』 [手当たり次第の本棚]
ダンセイニといえば、 打てば響くかのように、 『ハヤカワ文庫FT!の、ペガーナの神々!』 これが思い浮かぶ時代は、かなり長かったんじゃないか。 そう、荒俣宏訳の『ペガーナの神々』。 原本にあったシームの装画を使い、訳されていたあの本だが、じつは完訳ではなかっ... [続きを読む]

受信: 2005.11.02 10:41

» 『三半球物語』と『その他の物語』 [手当たり次第の本棚]
本書には、ペガーナの他、もう2つの短編集が収録されているのだ。 それが、『三半球物語』と『その他の物語』だ。 (その他の物語、は短編集ではなく、作品群と言うべきか)。 こちらは、ペガーナのような神話風物語ではないけれども、それぞれ、独特の雰囲気を持ってい... [続きを読む]

受信: 2005.11.02 10:42

« 夏らしい話(?) | トップページ | 帝都のディー判事 »