« 道ばたの撮影会 | トップページ | 「戦闘」ではなく「戦災」を語る »

2005.07.01

詩人・医者・ユマニスト

 ノストラダムスというと、あなたはどんな人物を想像するだろうか?
 偉大なる霊能者か、単なるペテン師か、オカルト狂いの変人か。そのあたりが一般的なところかもしれない。
 かくいう自分も似たような印象を持っていたのだが、果たして、本当はどうなのだろう?

 そんな疑問にまじめに答えてくれるのが横山紘一・高田勇・村上陽一郎編『ノストラダムスとルネサンス』だ。
 三人の編者を含む11人の執筆者たちによって紹介されるのは、「フランス・ルネサンス時代に生きた典型的知識人」としてのノストラダムスの姿だ。

「オカルト」が現代のように「呪術」の類義語ではなく、机上の空論を離れて宗教・哲学の源流を探ろうとする最先端の「学術運動」だった時代背景を抜きに、ペスト対策に尽力した医者であったノストラダムスが占星術師・予言者として有名になっていくのは理解できないだろう。

 そもそも彼の預言が詩として書かれたのは(インパクトがあってどうとでも取れる、というメリットもさることながら)「詩人は予言者であり、神の霊感を受けて詩作をするものが真の詩人である」とする当時の文芸運動・プレイヤード派の詩人たちの考えと軌を一にしているというのは、この本を読んで初めて知った。
(いや、本当は「プレイヤード派」についてもこの本で初めて知ったにひとしいのだけど……(^^;)。)
 文学のみならず大学改革論や歴史背景や思想・哲学の動向など、フランス・ルネッサンス全般の解説書としても読むことができるのもこの本の特徴だ。

 もちろんノストラダムス自身についても、祖父の代にカトリックに改宗した「改宗ユダヤ人」の家系に生まれ、そのために普通の信徒以上にカトリック教会寄りな姿勢だったことをプロテスタント派に非難されたことや、彼の最初の著書が医者として書いた『化粧品とジャム論』(どちらも当時は医薬品&栄養食品扱いだったそうだ)だということなど、興味深い背景が解説されている。

 ……そもそも、あの「1999年、7の月」で始まる詩の初出は『予言集』の中でもノストラダムスの死後2年も立ってから出版された版で、ノストラダムスの真作かすら疑う余地のあるものだったなんて、知る人は多くないんじゃなかろうか。

|

« 道ばたの撮影会 | トップページ | 「戦闘」ではなく「戦災」を語る »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18659/4778406

この記事へのトラックバック一覧です: 詩人・医者・ユマニスト:

« 道ばたの撮影会 | トップページ | 「戦闘」ではなく「戦災」を語る »