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2004.05.12

狄判事の友人

 自分の持っていた欧米人中国研究者への偏見を粉砕してくれたのは、中野美代子氏の 『「ディー判官もの」の作者』という文章なのだが、そこで紹介されていたファン・ヒューリックという人は、駐日大使まで務めたオランダの外交官であるだけでなく、アジアの諸言語に通じた上に中国の琴やテナガザルに関する本のみならず、唐の時代に実在した狄仁傑(中国音はディー・レンチエ)という人を主人公にした物語を書いた上、それを自力で明代の周回小説を模した文体で中国語に翻訳してしまったという、かなりすごい人である。
 その「ディー判官もの」(小説は全て「ディー判事」と訳してある)のシリーズが、はるか昔に買い逃した三省堂の単行本(古本で一冊入手)、ちくま文庫、中公文庫を経て、今はハヤカワ・ミステリから出ている(恐ろしいことに、これらほとんど全てが別の作品の翻訳だったりする)。
 ということで、ロバート・ファン・ヒューリック『観月の宴』を読了。
 県知事として三つ目の任地へ赴任中のディー判事(知事は判事を兼任する、念のため)が、州の会合で隣県を訪れたとき、殺人事件に遭遇し……というストーリー。
 シリーズキャラとして活躍していたディー判事の側近達が出てこない代わりに、この話で目を引くのが同僚の羅(ルオ)知事。
 丸顔に太鼓腹、資産家で酒や女や詩作に目がない遊び人、とみせて、その実かなり有能な知事という、なかなか面白いキャラクター。
 ミステリとしては事件の解決シーンが少々反則という気もするが、唐代伝奇や唐詩に詳しい人ならすぐにモデルのわかる登場人物などもいて、シリーズの読者や、ちょっと変わった中国ものを読みたい人にはお勧め。

 ちなみに、ハヤカワ・ミステリでは遺族の指摘に合わせて著者名を「ファン・ヒューリック」と表記しているが、以前の表記は「ファン・フーリック」が主流だったようだ。
 ネットで検索する際などは注意されたし。

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